magのOSS備忘録

使ったOSSソフトウェアについて書いていきます。

cygwin1.dllに依存しないNTEmacsをCygwin上でビルドしてみる

※実験です。

動機

  • 正直何をしたいのか分からないタイトルになった.
  • NTEmacsはMSYS2を使ってビルドされることが一般的だが, Cygwinでも出来ないかと試してみた.
  • 以前にビルドしたCygwinに依存するNTEmacsでは, 非力なWindowsマシンにおいてflycheck等で遅延が大きく実用に耐えなかったので何とかならないかを模索してる一環で試してみた.

前提 (実施環境)

ビルドする

基本的にはnt/INSTALLに記載されている方法と同様. 今回は実験的な意味合いが強いので, IMEパッチ等は当てずに実施. cygwin1.dllに依存させないようにするため, コンパイラMinGWを使用する.

事前準備

Cygwinで予め以下のパッケージをインストールしておく.

  • mingw64-x86_64-gcc
  • mingw64-x86_64-pkg-config
  • mingw64-x86_64-ncurses

ビルド方法

$ ./autogen.sh

configureスクリプトに対してMinGWを使うことを指定する. 今回は下記のようにCCも指定したが–buildオプションがあれば十分?

$ PKG_CONFIG_PATH=/usr/x86_64-w64-mingw32/sys-root/mingw/lib/pkgconfig CC='x86_64-W64-mingw32-gcc' CLFAGS='-g3 -O2 -gdwarf-2' ./configure --build=x86_64-w64-mingw32 --prefix=/path/to/install --with-w32 --with-modules --without-dbus --without-compress-install

ここからは今回詰まったところ.

上記のままconfigureスクリプトを実行すると下記のようなメッセージが表示される. pwdコマンドの実行が失敗しているようだ. build-aux/msys-to-w32の実行で起きているため, このスクリプトを見てみると"pwd -W"というコマンドを実行している.

~中略~
config.status: executing src/epaths.h commands
./build-aux/msys-to-w32: line 79: pwd: -W: invalid option
pwd: usage: pwd [-LP]
~中略~

MSYS2のpwdコマンドでは, -Wオプションを付けることによってWindowsのドライブ始まりのパスを取得することができるようだ.

$ pwd -W
C:/msys64/usr/lib

この状態でmakeを走らせたところtemacsを実行する際にエラーとなった. どうやらパスの扱いが上手く行っていないらしい.

$ export PATH=$PATH:/usr/x86_64-w64-mingw32/sys-root/mingw/bin
$ make -j8
~中略~
./temacs --batch --load loadup bootstrap
Warning: arch-independent data dir '/cygdrive/c/path/to/work/test_install/share/emacs/25.2/etc/': Permission denied
Warning: Lisp directory '/cygdrive/c/path/to/work/emacs-25.2/emacs/lisp': Permission denied
Error: charsets directory not found:
c:/path/to/work/test_install/share/emacs/25.2/etc/charsets
Emacs will not function correctly without the character map files.
Please check your installation!

MSYS2側で試しにビルドを行ってみると, src/epaths.hに定義されている値のうちPATH_DUMPLOADSEARCHがドライブ始まりのパスとなっていたため, これに合わせてsrc/epaths.hを変更する.

  • 変更前:#define PATH_DUMPLOADSEARCH “/cygdrive/c/path/to/work/emacs-25.2/emacs/lisp
  • 変更後:#define PATH_DUMPLOADSEARCH “c:/path/to/work/emacs-25.2/emacs/lisp

あとは再度makeを走らせるだけ.

$ make -j8
$ make install

インストールし終わったあとはMSYS2と同様に各種dllへのパスを通すなどの設定が必要になるが, とりあえず起動することは確認できた. やはりこんなコーナーケースは考慮されていないようだ. 今回はsrc/epaths.hを修正する方法を取ったが, build-aux/msys-to-w32を修正する方が良さそう.

参考

Emacs の dump-emacs 関数の怪 — ありえるえりあ

Cygwin上でEmacs 25.1をビルドする

動機

  • CygwinにあるEmacsパッケージではWindows IMEが事実上使えないため, IMEパッチを当てたバイナリが欲しい.
  • Cygwinを使用しているので, Cygwinに依存してしまっても問題なく, またMSYS2等を新たにインストールしたくない.
  • どうせなら最新版(2016/10/9時点)が使ってみたかった.

前提

ソースコード取得

emacs 25.1のソースファイルをダウンロードする.

IMEパッチを適用する

IMEパッチはrzl24ozi氏が公開しているものを使用する.

rzl24ozi’s gists · GitHub

使用するパッチ

ここでは以下のパッチを使用する. 必須は1のみであり, 残りは適用しなくてもよい.

  1. emacs-25.1-w32-ime.diff
  2. emacs-25.1-disable-w32-ime.diff
  3. emacs-25.1-cygwin-rsvg.diff

ダウンロードしたIMEパッチの適用

$ cd emacs/
$ patch -b -p0 < emacs-25.1-w32-ime.diff
$ patch -b -p0 < emacs-25.1-disable-w32-ime.diff
$ patch -b -p0 < emacs-25.1-cygwin-rsvg.diff

ビルドする

about patches and how to build emacs on Windows. (Japanese) · GitHub

README.txtにてCygwin版の手順をまとめてくださっているので, 順に実行する. Cygwinの各種パッケージ(autoconf, automake等)が必要になるため, setup.exe等でインストールしておく.

もしパッケージが不足していたらconfigureを実行したときに分かる. エラーメッセージを参照して, 不足したパッケージをインストールすればよい. 逆に不要な機能があれば configure スクリプトへ --without オプションを渡すことでビルドされないようにすることもできる.

autogen.sh

emacs-25.1-w32-ime.diff を適用すると configure.ac に変更が加わるため autogen.sh を実行する.

$ ./autogen.sh

configure

渡しているオプションについては, 以下の通り.

  • --prefixでインストールするディレクトリを指定する. CygwinのパッケージのEmacsは/usrにインストールされるため, ここでは/usr/localにインストールしている.
  • CFLAGSに-march=nativeを指定し, ビルドで使ってるCPUに合わせた最適化を行わせる. これを行わないならCFLAGSの指定自体が不要.
$ PKG_CONFIG_PATH=/usr/lib/pkgconfig CFLAGS='-g3 -O2 -gdwarf-2 -march=native' ./configure --prefix=/usr/local --with-w32 --without-dbus --without-compress-install --with-modules

正しくIMEパッチが適用されれば, 下記のように出力が追加される.

  ~省略~

  Does Emacs support W32-IME?                             yes
  Does Emacs support RECONVERSION?                        yes
  Does Emacs support DOCUMENTFEED?                        yes

  ~省略~

ビルドおよびインストール

ここでは時間短縮のために-jオプションで8ジョブを同時実行するように指定している. ジョブ数は使用している環境のCPUに合わせて, コア数の2倍程度を指定すると良いとされている.

$ make -j 8
$ make install

設定

~/.emacs.d/init.elに以下のように記載する. init.elをCygwin以外でも使用しているため, system-typeの比較を行っているが必要なければ削除する.

(when (or (eq system-type 'cygwin) (eq system-type 'windows-nt))
  (setq default-input-method "W32-IME")
  (w32-ime-initialize)
  (setq-default w32-ime-mode-line-state-indicator "[--]")
  (setq w32-ime-mode-line-state-indicator-list '("[--]" "[あ]" "[--]"))
  )

参考

EmacsWiki: Emacs From Git

NTEmacs / Emacs for Windows

GitHub - chuntaro/NTEmacs64: Windows 版 Emacs (通称 NTEmacs) の 64bit 版